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未来の都市を構想し、実現する

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重要なポイント

  • 多くの都市は、都市化の加速、インフラの老朽化、需要の高まり、脱炭素化目標による圧力の増大に直面しています。しかし、大規模な全面改修には費用と時間がかかりすぎる可能性があります。

  • 都市では、比較的安価で漸進的なモジュール型の改修によって、エネルギー、水およびモビリティシステムを中心に重要インフラのレジリエンスを改善しようとする傾向が強まるでしょう。

  • 民間投資は公共団体と連携してこうした改修を実施することにより、既存システムの効率性を高め、全面改修の緊急性が高い具体的な分野を当局が特定する助けとなることができます。

大都市は静止しない。常に変化し、世界を牽引している。

Edward Glaeser

米国ハーバード大学のエコノミストで、権威ある都市経済学の専門家であるエドワード・グレイザー氏はこう語りました1。グレイザー氏の著作は、なぜ都市が人類最高の発明であると言えるのか、そして都市の進化がどのように近隣地域をはるかに超えて文化的および経済的影響を及ぼし得るのかを明らかにしています。

世界人口の都市化が進む中、当社は今後数十年間で都市の重要性がさらに高まると考えています。しかし同時に、都市が直面する圧力も高まるでしょう。都市は、資産の老朽化、厳しい財政制約、意欲的な脱炭素化目標に取り組まなければなりません。

政府はこうした課題への認識を強めているようです。しかし、今日の大都市を現代化する抜本的な変革の必要性を説き、システム転換と未来的な輸送手段を謳う壮大な物語は、往々にして、実行能力や政策遂行に関わる困難をかろうじて取り繕ったものにすぎません。既存インフラの大規模な改修は、資金的にも時間的にもリソースの負担が大きすぎます。

むしろ、ほとんどの都市にとっては、信頼性を高め、システムのレジリエンスを強化する漸進的かつモジュール型の改修を通じて、投資可能となり得ると考えられます。こうした変革は、都市が成長に伴う痛みにうまく対処し、将来の経済をより堅固なものにする上で役立つはずです。

今日の大都市を現代化する抜本的な変革の必要性を説く壮大な物語は、往々にして、実行能力や政策遂行に関わる困難をかろうじて取り繕ったものにすぎません。

背景と制約

現在、世界人口の58%は都市圏に集中しています。この割合は2050年までに10%増大すると予想されています2。これは、都市が今後数十年間で、都市域に新たに流入する数億人規模の新たな住民を受け入れる必要があり、エネルギー、水、モビリティシステムに対する負担が高まることを意味します。

その結果、都市のインフラに対する圧迫は強まっています。全米277の都市圏における建物の1時間当たりのエネルギー利用を定量化した研究では、電力によるエネルギー使用強度が2050年までに2010~2019年比で11.9~25.6%増加すると予測しています3。また、都市の水利用は2050年までに2021年比で倍増すると推定されています。

現在、世界人口の58%は都市圏に集中しています。この割合は2050年までに10%増大すると予想されています。

これは世界的に見られるトレンドです。こうした状況を受けて、英国は下水の流出と漏水を削減するために1,040億ポンドの投資計画の推進に努めており、オーストラリアは2027年までに水道事業への支出額を2023年比で倍増させる予定です4。モビリティにおける課題の解決にも同様に高いコストがかかります。ロンドン市は、ロンドン地下鉄網の最も古い部分を将来にわたって利用できるシステムに作り替えるために54億ポンドの投資に乗り出しています。ロンドン地下鉄は通常、年間10億人以上の通勤客を運んでいます。

旧来のネットワーク(ロンドン地下鉄など)と新設のネットワークのいずれについても、それらを維持・高度化していくには多額の資本を必要とします。意欲的な脱炭素化目標を考えれば尚更です。国際エネルギー機関(IEA)は、世界の送配電網がネットゼロを達成しつつ需要の伸びに対応するには年間約6,000億ドルの支出を要すると推定しています。支出の大部分は、人口が膨張している都市部に集中すると見込まれます5

気候災害による損害に遡及的に対処するためのコストは、さらに途方もない金額になるでしょう。2025年だけでも、世界の自然災害による損失は約2,240億ドルに達し、そのうち保険の対象となっていたのは1,080億ドルだけでした6。世界経済フォーラムの直近のグローバルリスク認識調査では、気候災害による切迫したコスト負担が焦点となりました。長期的な重大性に基づくグローバルリスク上位10項目のうち、5項目は環境に関するリスクであり、異常気象が最上位に挙げられました。

Global risks ranked by severity (long term (10 years))

気候変動の有無にかかわらず、都市圏が現在の状況に対応する過程では摩擦が起きるでしょう。公共機関のバランスシートの制約が増大する中で、許認可をめぐる困難、サプライチェーンの非効率性、熟練労働者の不足は、往々にしてスケジュールをゆがめ、プロジェクトのコストを膨張させます。

漸進的変革の妥当性

こうした困難にもかかわらず、一連の漸進的な変革が可能であるだけでなく、ますます必要になっていると当社は考えています。こうした困難にもかかわらず、一連の漸進的な変革が可能であるだけでなく、ますます必要になっていると当社は考えています。

都市圏におけるエネルギー分配の円滑化と拡大には、いくつかの手段が役立ちます。

具体的には、分散型エネルギー源(DER)は需要側蓄電池(ビハインド・ザ・メーター)などのソリューションを提供し、顧客のピーク需要を引き下げ、給電線の制約を緩和します7。太陽光発電と蓄電池の組み合わせは「ダックカーブ」(太陽光による発電のタイミングと電力が必要とされるタイミングのミスマッチ)を平準化できます8。仮想発電所(VPP)は数千の小規模な資産を集約し、電力需要のピーク時における堅固で調整可能な発電能力を提供できます9

DERの導入は、受動的な消費者を、自らエネルギーを発電、貯蔵、活用する「プロシューマー(生産消費者)」に変える可能性があります。これは、太陽光発電、バッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)、電気自動車の充電、スマートメーターを通じて実現できます。

個人の関与が強まるように促すことは、需要が比較的集中している地域において、特に有意義な影響を及ぼす可能性があります。また、このような活動は電力の利用パターンに関する膨大なデータを生み出します。こうしたデータはエネルギー生産の最適化に活用できます。

電力会社とアグリゲーターはこのようなデータを活用し、リアルタイムのセンシング、分析、リモートコントロールを利用して、ユーザーとの協力の下、柔軟性の高い資産を大規模に管理し、需要側レスポンス(DSR)を通じた負荷軽減を促すことが可能です。当社は、DSRが都市の変化するエネルギー環境の中で効率性を高めるための洗練されたソリューションを提供すると考えています。DSRは建物や産業施設における電力消費を一時的に削減して需給の均衡に寄与し、電力負荷と送配電網の混雑を軽減します10。これにより、非効率的で割高なピーク発電所の必要性が低下し、送配電網の安定化が促進され、消費者のコストを節約できます11

フランスの需要側レスポンスおよびフレキシビリティ事業者のVoltalisは、欧州におけるDSRのリーダーとしての地位を確立しています。同社は欧州8カ国で150万台以上のDSR機器と接続しています12。この種のソリューションの有効性が最も高いのは、再生可能エネルギーから電力を調達している地域です。

その一例が英国です。英国の「クリーンパワー2030行動計画」は、2030年までに電力の80~84%を洋上および陸上の風力エネルギーと太陽光エネルギーから調達することを目指しています13。英国の送配電網は停電と電気料金の変動を回避するための柔軟性を必要とします。Voltalisなどの企業は電力負荷の変動の管理を支援することが可能であり、英国では2050年までに最大16 GWの柔軟な電力需要を活用できる可能性があります。これは現在の英国のピーク電力需要の約25%に相当します14

都市のエネルギーシステムを最適化するもう一つの方法は広範囲にわたるBESSの利用です。BESSを効率的に導入すれば、排出量を削減し、巨大プロジェクトのリスクとコストを回避することもできます。バッテリーシステムは、供給が需要を上回った時に電力を吸収し、午後遅くや夕方などの需要のピーク時に放出できます。これはDSRと同様、送配電網の停止リスクの低減に寄与します。

欧州ではBESSの設置が着実に増加しており、SolarPower Europeの分析では、2024年に21.9 GWhのBESSが新たに設置されたと報告されています。これは11年連続の増加で、蓄電池の総容量は61.1 GWhとなりました。拡大が続けば、総容量は2029年までに120 GWh近くに達する可能性があります。

同様に、都市には水道システムの効率性を高めるモニタリングの仕組みを導入する機会が存在します。

環境庁の予測によると、英国では2050年までに水の需要が現在の供給を25%超上回る見込みです15。これに対処する方法の一つは漏水対策です。英国の環境・⾷糧・農村地域省の報告によると、イングランドでは毎日25億リットル以上の漏水が起きていると推定されます16。これを踏まえ、英国の水道規制当局である上下水道サービス規制庁(Ofwat)は、水道管を流れる水の約20%が漏水によって失われていると推定しています17

Ofwatは、進展が見られない事業者に経済的ペナルティを課すことで、2050年までに漏水を半減させる取り組みを水道会社とともに開始しています18。スマート水道メーターは、漏水がいつどこで起きたかを確認しやすくすることで、この取り組みを促進します。

一部のスマートメーター企業は現地当局や水道会社と提携し19、デジタルサービスを利用して漏水をリアルタイムで特定するとともに、家庭が水の消費行動について理解を深めることを可能にしています。データ分析の向上とスマートメーター導入の拡大は、2029年までに英国の漏水を17%削減することを目指す規制当局の取り組み20を後押ししています。

都市のモビリティへのアプローチは世界各地で異なりますが、多くの地域では、より安全かつクリーンで包摂的な交通システムが優先されています。

そのために、マルチモーダル統合、人間中心設計、電動化、自家用車から公共交通機関、徒歩や自転車による移動への転換に重点が置かれています。一般的に、デジタルプラットフォーム、EVの導入、公共空間の拡充はこうした目標の達成を後押しします。

一部の人口集中地域は、内燃エンジン(ICE)車の禁止や追加料金の賦課と、自転車、電気自動車、電動公共交通機関などの排出量の小さい代替的な交通手段の利用を促すインフラの組み合わせを選択しています。例えば、ロンドンとニューヨークの両都市では、高燃費の自動車を利用しないよう促す仕組みが効果を上げています。都市の中心部におけるICE車の台数が減少したことで大気の質の改善が促進され、両市ともに渋滞税による歳入が増加しています21,22,23

一方、自転車と軽量軌道交通(ライトレール)への投資は既存の公共交通を補完できます。コペンハーゲンは再現可能なモデルを提供しています。コペンハーゲンでは、専用の自転車レーンや、公共交通機関とシームレスに接続する「スーパーハイウェイ」を設置しています。大規模な駐輪ハブが駅の近くに設置され、流動性の高いインターチェンジを生み出しています。その結果、2021年から2023年にかけて、自転車はコペンハーゲンにおける通勤手段全体の約半分を占めました。

他の都市も同様のモデルを導入しており、その一部は、欧州の公共バイクシェアリングとマイクロモビリティサービスの大手運営会社であるInurba Mobilityと提携しています。Inurbaは、よりサステナブルな都市交通をサポートするために、欧州と中南米の都市でテクノロジーを活用したオーダーメイドの自転車システムの提供を開始しました。

都市がモビリティ戦略を見直すにあたっては、順序を考えなければなりません。信頼性の高い代替的な交通手段と整合的な料金を設定し、社会的な不均衡を避ける必要があります。

DERの導入は、受動的な消費者を、自らエネルギーを発電、貯蔵、活用する「プロシューマー(生産消費者)」に変える可能性があります。これは、太陽光発電、バッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)、電気自動車の充電、スマートメーターを通じて実現できます。

漸進的な変革

当社は、今後数十年間の都市インフラの成果を決めるのは全面的な改革よりも規律ある順序付け(測定、最適化、そして構築)だと考えています。そして優れた戦略は、豊富なデータセットに基づき、信頼性を高め、ピーク需要のリスクを低下させるでしょう。

ほとんどの地方自治体にとって、単独で目下の課題に対処するのは困難である可能性があります。むしろ、民間資本が都市インフラを現代化するための拡張性ある柔軟な投資を実行し、そのギャップを埋めるのに適していると思われます。

公共機関が実行能力の不足によって期待される役割を果たせない場合、投資家は下方リスクを限定するための仕組みに重点を置くべきだと当社は考えます。原則に基づく確固たる投資は、ファンダメンタルズ、政策、実行規律を考慮したリソースの投入を通じて、未来の都市を築くことが可能です。

当社は、未来の都市の整備と資金提供は、インフラ投資家にとって、資本構成、長期的な資産スチュワードシップ、複数セクターの統合などに関する専門知識を活用する機会になると考えます。適切に実行すれば、レジリエントな未来の都市構造を構築できる可能性があります。

こうした行動を通じて、都市はグレイザー氏が考察した通り、引き続き変化の牽引役となることができます。

1 Triumph of the City, Harvard Kennedy School 

2 68% of the world population projected to live in urban areas by 2050, says UN | United Nations
https://www2.deloitte.com/us/en/insights/industry/financial-services/commercial-real-estate-outlook.html

3 Impacts of climate change, population growth, and power sector decarbonization on urban building energy use - PMC
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10584859/#:~:text=Abstract,north gradients under different scenarios

4 https://www.water.org.uk/investing-future/pr24#::text=Breadcrumb,removing harmful levels of phosphorus
https://wsaa.asn.au/Common/Uploaded files/library/submission/WSAA Submission_NSW Pricing Proposal FINAL.pdf

5 https://www.iea.org/reports/electricity-grids-and-secure-energy-transitions

6 Climate change presses on:
Devastating wildfires and intense thunderstorms exacerbate losses for insurers | Munich Re
https://www.munichre.com/en/company/media-relations/media-information-and-corporate-news/media-information/2026/natural-disaster-figures-2025.html#2126964707
民間資本は、都市インフラを現代化するための拡張性ある柔軟な投資を提供するのに適していると思われます。

7 US Department of Energy, Pathways to Commercial Liftoff: Virtual Power Plants, September 2023
https://climateprogramportal.org/wp-content/uploads/2025/06/LIFTOFF_DOE_VPP_2023.pdf

8 ScienceDirect, Remote work might unlock solar PV’s potential of cracking the ‘Duck Curve’, August 2024
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S030626192400761X

9 Virtual Power Plant Partnership and RMI, Meeting Summer Peaks:
The Need for Virtual Power Plants, July 2024
https://rmi.org/wp-content/uploads/dlm_uploads/2024/06/VPP_reliability_brief.pdf?utm_source=copilot.com

10 World Economic Forum, What is energy flexibility and how can it help meet rapidly rising energy demand?, October, 2025
https://www.weforum.org/stories/2025/10/energy-flexibility-and-demand-response/

11 GridBeyond, Demand response:
What is it? How does it work?
And why do we need it?, February 2026
https://gridbeyond.com/demand-response-what-is-it-how-does-it-work-and-why-do-we-need-it/

12 European demand response leader Voltalis announces investment plan up to £1 billion by 2030 in United Kingdom energy market - Voltalis Group
https://group.voltalis.com/en/content-type/press-releases/european-demand-response-leader-voltalis-announces-investment-plan-up-to-1-billion-by-2030-in-united-kingdom-energy-market-10065

13 National Energy System Operator, Clean Power 2030
https://www.neso.energy/publications/clean-power-2030

14 Can demand response save the UK’s energy grid?
https://voltalis.co.uk/blog/demand-response-uk-energy-grid/

15 Environment Agency, Meeting our Water Needs for the Next 25 Years, 21 March 2024

16 E8: Efficient use of water
https://oifdata.defra.gov.uk/themes/natural-resources/E8/

17 Leakage - Ofwat
https://www.ofwat.gov.uk/households/supply-and-standards/leakage/

18 Gov.uk, Minister Double:
Water companies must do more to reduce leakage, August 2022
https://deframedia.blog.gov.uk/2022/08/15/minister-double-water-companies-must-do-more-to-reduce-leakage/

19 Anglian Water, Anglian Water announces partners to complete smart meter roll out, October 2024
https://www.anglianwater.co.uk/news/anglian-water-announces-partners-to-complete-smart-meter-roll-out

20 Ofwat, Supply and standards, Leakage
https://www.ofwat.gov.uk/households/supply-and-standards/leakage/#:~:text=Ofwat has set targets for companies to,for delivery of 10.4 million smart meters

21 Transport for London, FOI request detail on ULEZ, March 2024
https://tfl.gov.uk/corporate/transparency/freedom-of-information/foi-request-detail?referenceId=FOI-4312-2324

22 Mayor of London, The Ultra Low Emission Zone for London
https://www.london.gov.uk/programmes-strategies/environment-and-climate-change/pollution-and-air-quality/ultra-low-emission-zone-ulez-london#:~:text=To help clean London%27s air,in outer London in 2024.

23 VitalSigns, New York City’s congestion pricing boasts big wins, January 2026
https://vitalsigns.edf.org/story/new-york-citys-congestion-pricing-boasts-big-wins

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Meet the authors

Adelaide Morphett

Adelaide is an Associate Director, Sustainability Specialist, in the Infrastructure Debt team, providing asset class sustainability expertise with a focus on due diligence, product development, reporting, and firm-wide strategic initiatives.

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David Cooper

David is head of IFM Investors’ infrastructure debt business in EMEA and Australia. He and his team are charged with sourcing infrastructure debt deals and conducting credit analysis of prospective investments, as well as management and marketing IFM Investors' capability in this speciality.

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